「きゃっ!」






「ウォッ!」







ぶつかったと同時に声が重なる・・・






ん・・?







ぶつけた鼻を押さえながら視線は徐々に上へ







ゲッ・・・!!






ぶつかりバランスを崩しかけた私の腕を掴んでいる手・・






ネクタイを外し2つほどボタンを外したYシャツの胸元






そして驚いた表情で私を見下ろしている瞳・・・







道明寺・・・







な、なにか言わなきゃって焦るんだけど






頭ん中が真っ白で何も出てこない







声が言葉が咽元に張り付いてしまったようで





なんとかこの状況を整理しようと瞬きを繰り返してる私の瞳・・







「大丈夫か・・?」






「・・・あっ!・・う、うん、大丈夫・・ごめんなさい、ぶつかって・・」





「い、いや・・」





たどたどしい言葉のやり取り・・・






「あ、あの・・手放して欲しいんだけど・・」





「あ、ああ・・わるい・・」





腕を解放され一歩後ろへ下がる







「あっ・・昨日ね、椿お姉さんに招待していただいて・・
 桜子と一緒に来たんだけど・・飲みすぎちゃったみたいで泊めていただいたの・・」







廊下で一気に事情説明・・・






いきなり話し始めた私に道明寺は少し驚いてるみたいだけど・・






「そうか・・お前、腹減ってねぇーか?」





「ん?お腹?だいじょ・・グゥ〜・・・」






どうして鳴る!私のお腹!!



笑われてるじゃない!!




恥ずかしい・・






「俺も腹減ってるんだ。
 用意されるから一緒に喰おうぜ!
 着替えてくるから先にダイニングに行ってろ!」






「いや・・いいよ!・・って・・ちょっと!オイ!」






行っちゃったよ・・



人の話し聞いてよ〜〜!!





どうすんのよ?!




道明寺と一緒に朝食?




嘘でしょ〜〜?



桜子〜どこ行ったのよ〜〜!!





・・って私・・席についちゃってるじゃない!!







とにかく廊下で立ちどまっているわけにもいかないから


階段を降りたところでメイドさんに発見されちゃってダイニングへと誘われちゃった・・




こちらのお席にどうぞなんて言われちゃって


素直に従っちゃった・・




テキパキと動くメイドさんを横目に落ち着かない心を持て余していると



ラフな格好に着替えた道明寺がダイニングに入ってきて私の前に座った






「桜子は夕べ帰ったみたいだぞ!」






桜子〜〜許さないからねぇ〜!


後で覚えてなさいよ!




心の中で桜子に悪態をつきながらも私の口から出てきた言葉は・・




"そう・・"




だけだった




目の前に並べられているのは朝食とは思えない程、豪華な食事




どれも美味しそうで眺めてるとまた私のお腹が鳴った・・




もう!どうなってんのよ!!私のお腹!!




また道明寺に笑われてるじゃない!!





「腹減ってんだろ?遠慮しないで喰えよ!」





目の前には美味しそうな食事と道明寺・・




え〜い!もう!




どうにでもなれ!!





「いただきます。」






胸元で軽く手を合わせてからフォークを手に取った





食べ始めると現金な私は美味しい食事に夢中になっちゃって


目の前に道明寺が居ることをすっかり忘れていた







「相変わらず上手そうに喰うな。」






彼の声が聞こえてきて思わずパンが咽に詰まっちゃった・・・






「ゴホッ・・!」





慌ててオレンジジュースで流し込む私のその姿にまた道明寺が笑ってる



私・・さっきから笑われてばっかりじゃない・・?








「わ、笑わないでよ!」






「わりぃ・・でもお前、変わってねぇーな?!
 ライズ家のお嬢様になってちょっとはお淑やかになったかと思ってたけど・・」






「そ、そう・・・?でも、あんたは変わったと思うけど・・?」






「そりゃあ、もう高校生のガキじゃねぇーしな。」






「違うわよ!カンクンで会った時の事言ってるのよ。」






「あ、ああ・・あの時か・・あの時は悪かったな・・
 俺なんかずっとイラついてて・・お前にもマットにも失礼な態度ばっかだったって反省してる。」







「・・・・・」








「んだよ?!人が反省して謝罪してやってんだからなんか言えよ!」








「えっ!?あっ・・うん・・あんたが素直に謝ってるからちょっとビックリしちゃって・・
 でも、私は気にしてないから大丈夫だよ。」






「そうか・・良かった・・」






「う・・うん・・」






二人の間に沈黙が下りてくる




会話が続かなくてなんとなく気まずい雰囲気を持て余して目の前のオレンジジュースを手に取った・・・










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