自宅のあるアパートを出て今日は運転手付の車に乗り込む




ソーホーのイタリアンレストランはお昼時で店内はかなり混雑していたが



オープンテラスになっている席に座り一人で



最新のヴォーグを読みながらランチを食べていた





お天気はいいし、ランチは美味しい、声を掛けてくる人もいない


最高〜!なんて思っていると




食後のデザートにティラミスを食べてエスプレッソを飲んでいる時


一人の男性が私の席の前に立ち止まった




逆光で浮かび上がったそのシルエットに見覚えがあった・・・




ビシッとスーツを着こなし黒の革張りのアタッシュケースを左手に


持ったその男性は私を一瞬で遠い過去へと連れ戻す・・・





「こちらにお邪魔してもよろしいでしょうか?」





声を掛けられ現実の世界へ・・





「・・席なら他にも空いてますけど?」




「そうですね。」





そう言って少しだけ口元を緩めたその人は



私の訝しげな視線など気にする事無く私の前の席に腰を下ろした





「何のご用ですか?」





「相変わらずせっかちですね。」





「おいしいランチの最後があなただって言うのが不愉快なだけよ。
 用件は何?さっさと話して私の前から消えてください。」





「分かりました。私もそうそうあなたに時間を取っていられませんので、
 手短にお話しします。」



「社長があなたにお会いしたいと申しております。」




「社長ってどちらの社長さんかしら?」




「これは大変失礼いたしました。
 まだ自己紹介が済んでおりませんでしたね。
 私、メープルホテルの社長、道明寺楓の秘書を勤めさせていただいております、西田と申します。」





「それで?ご用件は?」






「それは私も存じ上げておりません。
 本日、7時にアパートの方にお迎えにあがりますので。」





言いたい事だけ言うと彼はさっさと席を立って店を出て行ってしまった・・





残った私は唖然・・・





彼女が私に何の用なの?





まぁ、それも今夜、彼女に会えば分かることよね・・





突然現れた遠い過去が私が一番欲しかった未来を連れてきた









←BACK/NEXT→








inserted by FC2 system