牧野がNYから消えた・・





いや、俺だけが彼女の行方を知らないだけで



総二郎達に聞けば分かるのかもしれない



だけど・・何故だか彼女が今何処にいるのか聞けなかった





最近のNYの経済界では近々ペリー財閥のエドが総裁に就任して1年



彼の総裁ぶりも板につき今度のペリー財閥創立記念パーティで彼の婚約が



発表されるとの噂で持ちきりだった





相手は牧野なのだろう




分かっていた事だったが




いざその噂を聞くと耐えられない






二度とあいつをこの腕に抱くことは無いと思っている






だけどこのままここであいつが俺以外の男の手を取る姿など見ていたくない






ここから逃げ出したい・・






らしくないことばかり考えている俺に親父から呼び出しがかかった






親父から呼び出されることなど滅多に無い






何の用だ?






仕事でミスでもしかた?





いや、思い当たるフシはない・・





だとしたら・・




後は見合い話かなんかだろう・・





いや・・見合い話ならまだマシだ・・






このドアを開けたら俺の婚約者だって女がいるかもしれない・・




まぁ〜それもいいだろう・・



あいつ以外の女なんてどうせ誰でも同じなのだから・・





妙に醒めた気持ちで親父のオフィスのドアをノックする






オフィスには親父だけじゃなくババァまでいやがる






「どういったご用件でしょうか?」





「まあ、そう焦らずに座らないかね。」






さっさと済ませたかったがとりあえず親父の言葉に従った・・






「司、君に辞令を出そうと思うんだがね。」






辞令?






出したきゃ出せばいいだろうーが!!





どうせ俺に選ぶ権利などないのだから




そう思い黙ったまま親父の顔を睨みつけていると






「そんな怖い顔で睨まないでくれないかね。」







睨みつけている俺をものともせずに涼しい顔のままで



親父が俺の目の前に2枚の紙を差し出した






「ここに2枚の辞令がある。
 共に昇進の辞令だ。」






親父が辞令を手にしたまま話しを続ける






「今の君の役職は専務だが、ここにある辞令の1枚はこのままNYで副社長、
 もう1枚が日本支社の支社長だ。君はどちらを希望するかね?」






どちらを希望するかね?







・・親父の言葉が俺の空っぽの頭の中にこだましている・・






選べるのか・・?






未来を・・








「どうするかね?」







「どちらでもいいのか?」






「ああ、君の希望する方を選んでくれて構わないよ。」






「・・でも、どうしてだ?どうして急に・・」







「君はNYへ来てから私生活はともかくとして仕事は頑張ってきたじゃないか。
 だからこれはその事に対する報酬だと思ってくれればいい。それに私もいつまでもこのまま
 道明寺財閥の総裁の地位にいるわけにはいかないからね。そろそろ君に次期総裁としての
 足場を固めて欲しいと思っている。この昇進はそのための最終段階だ。」
「どうする?このままNYに残って私の元で修行するか?
 それとも日本で自分の力で足場を固めるか?」








そう言い終えた親父が俺に2枚の辞令を掲げた






目を閉じゆっくりと息を吐き出すとスーッとクリアになっていく視界・・





差し出された辞令の一枚を手に取った






これが俺の選んだ未来だ・・











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