「だからなんでメープルの取締役なんか引き受けたんだよ?!
 お前はあの男と結婚すんじゃなかったのかよ?!
 だから仕事も辞めたんだろ!?」







「私がメープルに就職したのは楓社長に誘われたからで
 仕事を辞めたのは別にエドと結婚するからじゃないわよ。
 それにどうして私がエドと結婚するって思ってたの?」




「お前…言ったじゃねぇかよ!俺に!」




「何時よ?そんな事言ったっけ?」







「滋の披露宴の朝だよ!一緒に朝メシ喰っただろ?!」







「あ〜あ〜…あの時の事言ってるわけね…」









「言っただろーが!」







「確かに言ったけどエドと結婚するって言った覚えは無いわよ。
 あなたが結婚するのかって聞くからいつかは誰かとって意味で言っただけなんだけど」




はぁ〜…



俺の思い過ごしだったのかよ…



だけどあんな風に言われたら誰だってそう思うだろーが!






「紛らわしい返事の仕方すんじゃねぇーよ!」





「勝手に勘違いしたのはあなたでしょ?人のせいにしないでよ!」







「おまっ!?…俺が悪いって言いてぇのかよ!冗談じゃねぇーぞ!
 あんな言い方されたら誰だってそう思うだろーが!
 だったらなんでお前は仕事辞めたんだよ?!」





「元々そのつもりだったからよ」








「あの会社はお前とマットの二人で始めたもんだろーが!?
 なのにロクな退職金貰わずに築き上げてきたもん滋に明け渡したんだから
 なんかあったって思うのが普通だろーが!」






「…人の退職金までよく知ってるわね?」





「ちょっと小耳に挟んだんだよ!」




「ふ〜ん…小耳にねぇ…あなた勘違いしてるようだから教えてあげるけど。
 あの会社は確かにマットと二人で立ち上げたものだけど
 元々の出資率は6:4でマットの方が上なのよ」







会社を立ち上げる時マットは5:5の対等な出資率でのスタートを望んだけど

私はそれを拒否した




どうしてかって?





その答えは簡単、会社を立ち上げる事はマットからの提案だったけど


それを受けたのは私の我が儘だったから




私がマットの話しに乗ったのは自分の力を試してみたかったからで


長く続けるつもりは無かった




だけどマットは違う



彼の気持ちの中には挑戦したいって気持ちもあっただろうけど


彼は単なるお金持ちのお坊ちゃまの道楽で事業を始めたわけじゃない



彼の性格と普段の言動からは判りにくいけど


マットは自分がペリー財閥の一員だという事を忘れてはいない




次男という立場で財閥の跡取りとして完璧な兄がいる



大学を卒業しそのまま財閥の仕事をしながら大学院に通い


資格を取ったところで財閥の中では常に二番手だという思いがあった




だからマットは自分自身が認められ将来財閥の中での自分の地位を


確固たるものにする為に会社を立ち上げた





恐らくそう遠くない未来




マットはあの会社をペリー財閥の傘下に入れ



その実績を手に財閥内で活躍し始めるだろう



彼にはあの会社では小さすぎる



もっと広いフィールドで自信を胸に羽ばたくはず




だから私は私の望んだ未来へ行こうと思った



いつかきっと私にも羽ばたくチャンスが訪れるはず






だからその時の為に今はしっかりと力を蓄える













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