会場に少し遅れて到着すると既にパーティは始まっていて




会場に一歩足を踏み入れるたびに誰かしらに声を掛けられて


いっこうに前へと進めない




俺の視線の向こうには華やかなライトの下で




真っ赤なシルクのドレスを身に纏い



にこやかに招待客と挨拶を交わす牧野の姿




そしてその隣には穏やかな笑みをたたえたブロンドの背の高い男




メキシコで会って以来だったがあの時とは全く違うオーラーを発している




俺の記憶の中にある牧野じゃない・・





しっかりと前を向き胸を張って立つその凛とした姿に見惚れてしまい



代わる代わる挨拶によってくる奴らの話しなんてロクに聞いていなかった





ふいに聞きなれた親友の声がして我に返ると


さっきまで俺に群がっていた人垣は消えていて



目の前には類の姿が






「司、怖いよ。」





「はぁ?何がだよ!?」





「すっごい顔でエドとつくしを睨んでるよ。
 自覚ないの?目だけで人殺しそうだよ。」





楽しそうに笑いながら俺様を人殺し扱いしやがる




親友を無視してボーイからグラスを受け取り琥珀色の液体を流し込んだ






「類!なんであのヤローが牧野のパートナーやってんだよ!?」




「業務提携するからなんじゃないの?」





速攻で答えが返ってきた・・





類が知ってたって事は当然、他の奴らの耳にも入ってるって事だよな・・?




なんで俺様だけ知らねぇーんだよ!?




クソー!あの秘書!!




クビにしてやる!!!








その後はずーっと牧野の姿を目で追いかけながら


イライラと時間を持て余していた




牧野とエドの周りにはびっしりと人垣が出来ていて





新しいメープルの顔と将来アメリカの経済界のトップに立つであろう男に


取り入ろうと鼻息の荒い親父共が我先にと


薄気味悪い笑顔を浮かべ挨拶をしてやがる





会場に設けられているひな壇に親父が上った





まず親父のどうでもいいクソ面白くねぇ挨拶に続いて





俺様が呼ばれ正式に道明寺グループの日本支社長就任が報告された





一言挨拶をとマイクを握らされて事前に秘書が持ってきていた





あいさつ文の丸暗記をそのままに話す・・




当たり障りの無いスピーチに大げさな拍手が返って来る・・




何の感動もない・・





今はただただ目の前に居る牧野の事が気になる






パートナーの男と寄り添うように立ち





野郎の手が牧野の腰に回っているのが見える





俺様のスピーチの間にも時折、顔を近づけなにやら小声で言葉を交わす二人に



壇上から降りて行って無理やりにでも二人を引き離してやろうと思った瞬間、



横からババァの手が伸びてきて握っていたマイクを奪い取られた





驚いて一瞬動きが止まる俺と目が合ったババァは何事もなかったかのように




メープルの新しい取締役として牧野を壇上に呼び




続いてペリー財閥との業務提携も発表されあの野郎も壇上に上ってきた





穏やかに挨拶をする二人




ストレスが溜まるだけの就任パーティーが過ぎて行く





のっけからイライラする展開で思うように進まない・・





このままで3年間が過ぎて行く












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