朝から立て続けに2つの会議に出席し昼には取引先との会食もこなし




その後はオフィスに篭って書類と格闘しやっと一息ついた午後5時





NYにゆっくりと夜が降りてくる






太陽光に代わって人工的な街の明かりがオフィスの窓に反射し始めた頃





先ほどコーヒーを持ってきたばかりの秘書が戻って来た





俺のデスクの前に立った秘書は






「司様、アポイント無しのお客様が是非、司様にお会いしたいとお越しなのですが・・
 いかが致しましょうか?」







「そんな事いちいち聞かなくても分かってんだろーが!?
 アポイントの無い客は全部追い返せ!」







くだらない用件を告げる秘書に怒鳴り声を上げる・・





「は、はい・・ですが・・お、お客様のお名前というのが・・
 ケイト・ライズ様と名乗ってらっしゃいまして・・
 ど、どうも・・ご本人様のようなのですが・・いかが致しましょうか?」





ケイト・ライズ?




牧野か???








「バカヤロー!追い返してどうすんだよ!?
 さっさとここへ通せ!!」





「は、はい!」








慌ててオフィスを飛び出して行く秘書の背中を見送ってからの俺は




体中の血液が一気に流れ始めたような感覚に襲われて落ち着かねぇー





牧野の方から俺を訪ねて来るなんて初めての事じゃねぇーか?





今夜にでも押しかけようと思っていた相手が自ら飛び込んで来た





その事実に落ち着かねぇんだよ!





今まで手にしていた書類もそっちのけでソワソワして





椅子から立ったり座ったり・・




デスクの上に散乱している書類を片付けたり・・





窓ガラスに映る自分の髪型をチェックしたりと




落ち着かない動作を繰り返す事、約5分






ノックの音がして秘書に案内された牧野が入って来た・・・








秘書が出て行ってオフィスには牧野と俺の二人だけ・・





互いに立ったままで妙な緊張感が漂っている





「久しぶり。」







口火を切ったのは牧野の方で・・






軽く笑みを浮かべながらデスクの方へと向かってくる







「お、おう・・久しぶりだな・・」






ヤベッ!声が裏返った!!







焦って咳払いする俺を気にする事なくデスクの前で立ちどまった牧野は




まっすぐに俺を見つめたままで俺が話し出すのを待っているようで・・




彼女から目が離せないまましどろもどろの状態で言葉を繋げる






「よ、よう…どうしたんだよ?!」







「ねぇ?私をあんたの秘書に雇ってくれない?」








前置き無しの突然の牧野の言葉に一瞬でフリーズ



はぁ?



こ、こいつ…今なんて言った?








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