「わ、わりぃけど…もう一度言ってくんねぇか?」






「だから私をあんたの秘書に雇ってくれないって言ったのよ」







「お前…自分で何言ってるか分かって話してるんだろうな?」







「当たり前でしょ。」









呆れたような声で答えた牧野だけど俺はまだ信用出来ねぇ!






三年間ずっとないがしろにされてきた経験からか





こいつのこの突然の申し出を素直に喜ぶ事が出来ない









「なんでいきなり俺様の秘書になりたいなんて言ってんだよ?!
 それに俺様がお前を秘書に雇ってどんなメリットがあんだよ!?」










「メリットね…クスッ、あんたも一応は交渉は出来るんだね?」









「俺様を馬鹿にしに来たのか?!
 だったら俺様は忙しいんだよ!とっと帰れ!」









「やっぱり思い過ごしか…」










「あぁん!?喧嘩売ってんのか?!」








「怒鳴らないでくれない?私は真剣に就職活動中なんだけど」







「就職活動中?」







「そうよ。私、今、無職なんだもん。」








サラリと言ってのけるこいつの思考についていけない・・




こいつが俺様の秘書って・・





秘書って事は四六時中、行動を共にして誰よりも一緒にいる時間が長い





それはすんげぇ嬉しいんだけどよ・・





俺様が望んでいる関係はそんなもんじゃねぇーんだよ!









「さっきのメリットだけど・・」






「ん?」







話しを続ける牧野に思考中断・・






「私を雇うメリットよ。」






「ああ・・あんのか?」





「あんたが今、抱えてる都市再開発のプロジェクトを取らせてあげる。」






ハァ?










都市というものは再開発という名の元に



行政が主導を取り少しずつ姿形を変えながら





その時代のニーズにあったものに生まれ変り発展してゆくものだ






それが大都市になればなるほどそのスピードが速く開発の規模も大きい





ここ十数年来絶えず東京の何処かで再開発事業が行われている





規模が大きいと当然、動く資金も莫大でその経済効果は大きい





道明寺にとっても今回の再開発事業の受注は必須で




その為に時間と金は惜しみなく費やしてきていた






現在、受注の最終段階で道明寺ともう一社・五代グループとの間で争っている





最終プレゼンは2ヵ月後に行われる予定で




それに向けて計画立案の最終確認作業が進められているが・・・






現在のところ・・ライバル社の五代グループに一歩先を越されていて








道明寺は劣勢に立たされ余談を許さない状況で



プロジェクトチーム内部にも焦りの色が見えている






このプロジェクトの落札に失敗する事は道明寺にとって・・




いや・・次期総裁の俺様にとってかなりの痛手になるが





状況は悪く






好転する材料も無い状態なのに・・







「お前・・状況分かって言ってんのか?」






「分かってるわよ。今のままだとあんたは五代に負ける。」








分かっている事だけど眉一つ動かさず真顔で言われるとマジでムカつく!






「なんの根拠があって言ってんだよ?!」






「根拠ならあるわよ。」







「じゃあ・・まずその根拠を示せよ!」








俺の言葉に牧野が少し微笑んだように見えた












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