あの日から2ヶ月




季節はすっかり秋に変わり




NYがもっとも美しい季節がやって来た




落葉樹が順に葉を落とし黄色の絨毯となって道に敷き詰められる




そんな中、妻は相変わらず日課の散歩を鴨とヤギを連れて出かけている





キース会長はあの日の言葉通り




翌日には正式に提携に向けての前向きな返答があり





現在、提携に向けて大詰めの作業に入っている




仕事は順調





妻との関係も順調










心身ともに充実した毎日を送っていた俺は




この充実した毎日を俺に与えてくれている妻への感謝の意味を込めて




あるプレゼントを用意していた





オフィスに今しがた届けられたばかりのバスケットの中から顔を出している小さな犬




生後まだ3ヶ月で色は白



犬種は母犬がシーズーだとか言っていたが



父犬は不明の雑種の小型犬





俺は犬が嫌いだ!



決して怖いとかじぇねぇーぞ!



ちょっと苦手なだけだ!!










妻は本心では犬を飼いたいと思っているのだろうけど




俺が犬嫌いなのを知っているから遠慮している






仕事が順調なのも私生活が充実しているのも





妻は意識していないかもしれないが






全て妻のおかげだと思うから







日頃の感謝の意味を込めて妻へのプレゼントだ







元々、キース会長宅のジャッキーに似た白い小型犬を探していた俺の元へ




アメリカ人秘書の一人から自分の母親が飼っている犬が5匹も子供を産み





流石に一気に増えた犬を飼いきれないので引き取り手を捜していると言ってきた






雑種だってとこに軽〜くひっかかりはしたが




ジャッキーも元々は捨て犬で雑種だと言っていたし




妻はそんな事気にしないだろうから引き取る事を決めた













一分でも早く妻の喜ぶ顔が見たくて早めに仕事を終え帰宅する




車の中から妻へ今から帰るとコールした後、




犬を見た時の妻の喜ぶ顔が思い浮かびついつい俺の頬も緩む







部屋の前から帰り着き犬の入ったバスケットを抱え





呼び鈴を鳴らすとドアが開き妻が出迎えてくれた・・・






が・・・







俺の抱えていたバスケットから





ちょこんと顔を出していた犬を見つけると同時に悲鳴を上げた










「うるせぇーよ!大きな声出すな!
 こいつもびっくりしてんだろ!」






「ご、ごめん・・びっくりしちゃって・・
 どうしたのこの子?」







妻は俺からバスケットを受け取るとそのまま床に置き




子犬を胸元へ抱き上げている







「秘書のおふくろさんちで生まれたのを引き取ってきた。」





「じゃあ、この子飼ってもいいの?」






「ああ、こいつはお前の犬だ。」






「ありがとう〜司〜!」







大喜びしている妻の笑顔に満足してリビングへの扉を開けて




俺の足はそこでフリーズしてしまった・・・







別に家具の配置が変わってるとか



芝生が引き詰められてるとか





天井にでっけぇ穴が開いてるとかじゃねぇーんだ・・






ただ一匹・・いや・・一羽だな・・







いるはずのねぇ奴がソファーの背凭れに掴まり毛づくろいしてやがる・・















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