俺鴨はアヒルに惚れてて






アヒルは類鴨に惚れてる・・ってか?







どーでもいいぞ!







激しくどーでもいい・・








目の前では俺鴨が類鴨に寄り添っているアヒルの気を引こうと





小枝をくわえてきたりエサを運んできたりといろいろやっている






物で釣ろうとしてんだな・・?






けどよ・・・思いっきり空ぶってんぞ!







アヒルは近寄って来る俺鴨から逃げるように背を向け全く脈なし・・






心なしか寂しそうな俺鴨・・







オイ!頑張れよ!










何時の間にやら心の中で俺鴨を応援している俺・・・









俺鴨が近付けば遠ざかるアヒル







類鴨の周りを微妙な距離感で追いかけっこ






類鴨はバタバタと自分の周囲を動き回る二羽に





少しだけうっとおしそうな視線を一瞬だけ向けたけど






すぐに興味なさそうにまた眠ってしまった









「なぁ?類はアヒルに惚れてねぇーのか?」








「う〜ん・・それがいまいち分からないのよね・・
 嫌ってはないと思うんだけど・・自分には関係ないって感じで
 道明寺にもジョージにも無関心なのよね・・」









俺鴨→アヒル→類鴨








どうやら一方通行の恋模様みたいだけど・・








いつか見た光景に






胸の奥の







忘れたくても忘れられない







俺にとって忌まわしい過去が蘇ってくる







今はしっかりと繋がれている俺と妻だけど・・・






恋の始まりは今、目の前で展開されている







鴨とアヒルの関係そのもので







追いかける俺に逃げる妻






そして妻が惚れていたのは類








   俺鴨→アヒル→類鴨







   俺→妻→類








そのまんまで







なんかすんげぇムカついてきたぞ!!








頑張れ!俺鴨!










しばらく追いかけっこを続けていたアヒルと俺鴨だったが








アヒルも俺鴨から逃げる事に疲れてきたのか







諦めてその場に座り込んでしまった










すかさず類鴨とアヒルの間に座る俺鴨







見てるとすんげぇ虚しいぞ・・・







俺の胸に去来するのは








恋しくて恋しくて恋しすぎて









持て余していた妻への切ない恋心・・・










マジであの三羽があの頃の俺達に見えてきた








密かに俺の中でアヒルをつくしと命名する











「ねぇ?怖い顔してどうしたの?」







どうしたの?なんて脳天気に聞いてんじゃねぇーよ!







「なぁ・・お前は誰に惚れてんだよ?」








「はぁ?どうしたのいきなり?」






「いいから答えろよ!」







「う〜ん・・誰なんだろうね?」







笑いながらそう答えた妻・・・







「ムカつくな・・お前!」







「ねぇ、司?もしかしてあの子達に自分を重ねちゃってる?」








「重ねてねぇーよ!」









「クスッ・・重ねてるんだね・・私も重ねちゃったよ・・
 なんか似てるもんね・・あの頃の私達の状況に・・」







別に今さら妻を類に取られるとか・・






妻が居なくなるとか・・







そんな事を考えて不安になったりなんてしねぇーけど・・・







追いかければ追いかけるほどに







逃げて行く妻の後ろ姿ばかり見ていた自分を思い出す







学園でも街中でも気が付けば妻の姿を探していた俺






類だけに向けられていた笑顔を俺にも向けて欲しいのに







優しくなれなくて喧嘩ばっかりで思い通りにならない日々








ハァ〜・・恋わずらいだな・・









「ねぇ・・溜息出ちゃうでしょ?」






出るな・・溜息・・








重なる過去の情景に何故か胸が苦しくなる








「私ね・・あの道明寺見てたらなんだか胸が苦しくなってきちゃって・・
 あの頃のあんたもこんな気持ちだったのかなぁ〜って思ったのよね・・」









今頃、鴨とアヒルを通じてやっとあの頃の俺の気持ちに気がついたと






ふざけた事を言う妻に脱力・・・







「今頃かよ・・」










「だって・・あの頃はあんたに苛められてたし・・
 私は花沢類の事が好きだったんだもん!分かるわけないじゃん!
 ハハハ・・」








笑ってんじゃねぇーよ!








俺は笑えねぇーぐらい必死だったんだよ!








「ねぇ?なんとか道明寺の恋を成就させてあげられないかな?」








確かにあの頃の俺達と状況は被ってるけどよ・・





鴨とアヒルの恋なんて・・






はっきり言ってどうでもいいぞ!







けど・・それをここではっきりと言って








妻のご機嫌を損ねるほど俺様はバカじゃねぇーんだよ!









「さぁな・・でも大丈夫じゃねぇーか?」







「どうしてそう思うの?」







上から俺の顔を覗き込んでくる妻






俺は妻の膝枕から身体を起こすと







横に座り直し妻の肩を抱き寄せる









「今、俺の隣にはお前が居るだろ?
 だからあいつらも大丈夫だよ。」










「クスッ・・そうだね・・大丈夫だといいね・・」









「それにあいつらはお袋に妨害されてねぇーし!」








「ハハハ・・確かにそうだね!」








「あいつらが上手く行くように俺達がお手本見せてやろうぜ!」








「お手本?」







「そう、こうするんだよ!」








妻の頭を2、3度軽く撫でてから







ゆっくりと重ねた口唇






抵抗無くすんなりと受け入れられる愛情







庭を駆け抜けた風が木々を揺らし







水面を波立たせる






何者にも代えがたい妻との至福のひと時のはずなのに・・








足元から聞こえてきたのはチャッピーの唸り声









ハァ〜・・今はお袋の代わりに犬が俺様と妻を妨害しやがる!















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