そんな俺の願いに妻が気付くはずもなく







隣に座る妻は水面に指を入れ水を掬い上げ







近くを泳ぐ鴨にちょっかい出している











「あっ!そうだ忘れてた!」








「何を?」










「花沢類から電話が掛かってきたんだけど・・
 司にお礼言っといてって言ってたよ。
 それから、そのすぐ後に美作さんからも掛かってきたんだけど・・
 こっちは"どういうつもりだぁ〜!"ってなんかすっごく怒ってたけど・・
 あれなんだったんだろう?司、何か知ってる?」











「ああ、あきらからは俺にも掛かってきたからな!」









「何したの?美作さんがあんなに怒るなんて余程の事だよ?!」










「いいんだよ!あきらは10年に1回ぐらいの割合で
 なんかしんねぇーけど爆発すんだよ!幼稚舎ん時も高等部ん時も
 いきなり怒鳴り散らすだけだったからほっときゃいいんだよ!」














「ほっとけばいいって・・前の2回の爆発も確実に原因はあんたでしょ?」










「俺だけじゃねぇーよ!総二郎も類もだし!
 それに今回、俺は何もしてねぇーぞ!」











俺が嘘ついてるみたいな








非難がましい視線を向けてくるんじゃねぇーよ!














「今回はマジだぞ! 
 俺は類にアヒルを送ってやっただけだからな!
 あきらを怒らせたのは類だ!」










「ねぇ?どうして花沢類にアヒルを送ったの?」











「鴨の類がアヒルのおもちゃに惚れてんだろ?
 だから人間の類にもアヒルを送ってやったんだよ!」











「さっぱり分からないけど・・
 それと美作さんの怒りって関係あるの?」









「それは・・類がカフェにアヒルをぶちまけたからあきらが怒ってんだよ!」











「カフェ?ぶちまける?
 ちゃんと分かるように説明してよ!」












面倒くせねぇーな!






そう思って思いっ切り顔に出してるのに






妻は気にせず"ねぇ、ねぇ!早く教えてよ!"と






俺の袖を引っ張ってやがる















しょうがねぇーな・・









「あきらんとこのビルに類がプロデュースしたカフェがオープンしたんだよ。
 そのカフェの真ん中には噴水が置いてあって
 類はそこにアヒルをぶちまけたんだよ!」










「素敵ぃ〜!」









本気でそう思ってんのか?









だとしたらかなり変だぞ!











「何処が素敵なんだよ?!」










「素敵じゃない!アヒルが泳ぐカフェなんて!」










アヒルって黄色いおもちゃだぞ!







泳いでねぇーし・・









浮かんでるだけだし・・・













「そんな素敵なカフェなのに・・どうして美作さん怒ってるの?」









きっとお前には永遠の謎だと思うぞ!










「さぁな・・あきらの虫の居所が悪かったんだじゃねぇーか?」









もうこの話しは終わらせようと







興味なさそうにそう答えた俺の言葉は妻の耳には届かず・・









"いいなぁ〜私もそのカフェに行ってみたいなぁ〜"







なんて呟いてやがる!









「カフェって日本だぞ!?」








「知ってるわよ」










笑ってんじゃねぇーよ!







お前の場合は場所が例え北極だって・・








いや・・月だって油断出来ねぇーだろ!








「勝手に行くんじゃねぇーぞ!」








「分かってるわよ!」








全く信用できねぇ!
















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