クソッ!






さっきから何なんだよ!?







さっきからずっと鴨が一羽







ボートのステップに上ってきて







俺の足元に纏わりついてきやがる!







邪魔だ!







どけよ!








ケツを俺に向けてバタバタすんじゃねぇーよ!







水が掛かるだろ!







あっち行けよ!








妻には見つからないように足を小さく動かして鴨を追い払おうとしたけれど






鴨は全く知らん顔で中へ入ってこようとしている















足元をチョコチョコされてうっとおしいから







ちょっと・・・








ほんのちょっとだけ・・








足を横に滑らして鴨をボートから追い出そうと







動かした足が思いのほか反動がついてしまって鴨を蹴ってしまった・・








グワッ!と鳴いていけに落ちてしまった鴨











その声に気付いた妻が俺の方へと身を乗り出した瞬間









"西門さん!!"と叫んだ










ゲッ!こいつ・・総二郎だったんかよ・・








で・・次の瞬間・・












キャッ!と妻の悲鳴が聞こえ








身を乗り出していた妻がバランスを崩し池に落ちかけている・・








互いに咄嗟に・・








妻は俺の髪を掴み








俺は妻の服を掴んだけど・・








間一髪、間に合わず・・









バッシャーン!!と派手な水音を立て








頭から池に落ちた俺と妻








咄嗟に妻の腰を掴み水面へと顔を出す









顔を出した途端、少し水を飲んだ妻が咳き込みながら







俺の首に腕を回し掴ってくる










「オイ!大丈夫か?!」










「・・うん・・ゴホッ・・大丈夫・・司は?」








「俺は大丈夫だ!」











「・・ゴホッ・・あっ!西門さんは!!」










俺に掴まったままキョロキョロと周りを見回す妻・・










「あいつなら大丈夫だ!
 今、ボートの上にいやがる!」











妻の後ろに浮かんでいるスワンボートの上には






総二郎鴨が何事も無かったかのような涼しい顔で乗っている

















「良かった〜!」










良くねぇーよ!









俺たち池に落ちたんだぞ!!










「良くねぇーよ!全身ずぶ濡れじゃねぇーかよ!」










「ハハハ・・そりゃ池に落ちたんだもん!
 当たり前じゃん!」











笑ってんじゃねぇーよ!









「ねぇ、司?足着いてるの?」









「ああ、かろうじてな。」









「背が高いのってこんな時、便利だね!」









「そーだな・・滅多に無いシチュエーションだけどな!」









「アハハ・・でも楽しぃ〜!」










だから全然、楽しくねぇーよ!














「そろそろ上がるぞ!」







「え〜もう上がっちゃうの?!」








「もう十分だろ?!」










妻に付き合ってたらこのまま池で







水泳大会が始まりかねないので







腕を伸ばしボートを引き寄せる








まず妻を上がらせようとしたのだけど








安定の悪いボートに上がるのは難しいうえに








ボートの上には総二郎鴨があっちへ行け!とばかりに








ステップに掛けられた妻の手を突いてきやがる!








"イタッ!"と引っ込められる妻の手









「まずそいつを下ろせよ!」










「そう思ってるんだけど・・捕まえられないんだもん!
 こら!西門さん!突くな!」







「なんでそいつはさっきからボートに纏わりついてんだ?」








「う〜ん・・多分なんだけど・・
 西門さんこのスワンボートに恋しちゃってるみたいなのよね・・
 ずっと後ろついて来るしナンパでもしてるつもりなのかな・・?」









もう・・今さら誰が何に惚れてても








驚かねぇーけどよ・・






自分の何十倍もデカイのに恋するって・・





せめて大きさは考えろよ!
















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