OPEN前日に類によって放たれたアヒル






すっかり臍を曲げてしまった類の事を考えると



このままにしておいた方がいいのかもという




考えが一瞬だけ頭を過ぎったりもしたけれど・・






やっぱりダメだ!






俺がこの空間に耐えられなかった・・






類が帰って30分後には綺麗に片付けられていたアヒル達






元通りの理想の空間に戻った店内を見渡した時には





俺の頭の中からは臍を曲げた類の怖さなんて





すっかり綺麗さっぱり消え去っていた









類が何と言おうとアヒルは無しで行くぞ!!



と決意して迎えたOPEN当日





ほぼ徹夜での最終確認を終え





朝10時から始まったオープニングイベント






日本に初登場のヨーロッパブランドのショップなどOPEN前から






話題になっているショップも数多くありマスコミも多く取材に訪れていて






俺はその対応に追われていた









俺の親父やこのビルの設計を担当した世界的に有名な建築家に








イメージキャラクターをしているモデルなどによるテープカットを終え






いよいよ客を入れるという段階になって俺の携帯が鳴った










掛けてきたのはカフェの店長をしている奴からで





俺が電話に出た途端、今、類が来てアヒルが居ない事を




無表情で怒っていると慌てている・・







俺は慌てて電話を切ると





近くに居た社員にその場を任せカフェへと急いだ







まぁ・・類が怒るだろうなぁ〜とは予想してたけど




今日、類が来る予定が無かったから




今日だとは思っていなかった・・





OPEN初日だけは何とか回避出来るだろうなぁ〜と思っていたのに





それにこのままOPENしてアヒル抜きの既成事実を作ってしまえば






流石に類だって社会人なんだから





諦めてくれるだろうとも思っていたのに・・






考えが甘かった・・・







カフェに着くと予想以上に機嫌の悪い類は






俺が"よお!"と声を掛けても完全に無視で





カフェの店長に向かって





"アヒルは何処?"と聞いてやがる





「オイ!類!無視すんな!
 アヒルは俺が片付けさせたんだよ!
 もう客入れが始まるから諦めろ!」







大きな声を出しながら近付くとやっと俺の方を向いた類は






「ねぇ、あきら?」






「なんだよ?」





「今日はあきらの親父さんも来てるんだよね?」





「ああ、来てるけど・・それがどうかしたのかよ?」






アヒルとは全く関係ない類の言葉に戸惑ってしまう







「あきらが今、付き合ってる人妻って里佳子って名前だよね?」












はぁ?





な、なんなんだよいきなり!?






でっけぇー声で人のプライベートを暴露してんじゃねぇーよ!








「おお前・・何言ってんだよ!?
 今、関係ねぇーだろ!?」








「そうかな?あきらが今付き合ってる人妻ってうちの重役の奥さんなんだけど。
 マズイよね、取引先の重役の奥さんと不倫してるなんて親父さんにバレたら。
 どうなるんだろう?試してみる?」






悪魔だ・・





目の前に悪魔が居るぞ・・・







「そそんな脅し通用しねぇーからな!」








「親友を脅すなんて人聞きの悪い事言わないでくれる。
 俺はアヒルを元に戻してって言いに来ただけなんだから。
 後はあきら次第だよ。どうする?」














十分、脅してんじゃねぇーかよ!






クソッ!




里佳子さんのダンナって花沢の重役だったのかよ!?




確かに重役だってのは聞いてたけど・・




どこの会社かまでは聞いてなかった・・





マズイよね・・って・・





マズイに決まってんだろ!






クソッーーー!!







「分かったよ!アヒルは元に戻してやるよ!
 だけど条件がある!」







類に脅されてこのまま



おめおめと引き下がるわけにはいかねぇーんだよ!




だから最低限の条件は付けさせてもらうぞ!!






「条件ってなに?」







「アヒルを放つのは1ヶ月だけだ!
 1ヶ月経って評判が悪かったり
 当初の売り上げ目標を達成してなかったら即撤去するからな!」







「うん、それでいいよ。」






自信があるのか即答した類





クソッ!





俺は店長に指示をして夕べ撤去したアヒルを持ってこさせて




噴水へと放った





一瞬で立ちくらみを覚えるほどシュールな空間に変身するカフェ





だけどこのままここで立ちくらみしてる場合じゃねぇ!





耳に挿したままのイヤーフォンからはいよいよゲートが開き





客の入場が始まったと伝えている




いよいよカフェがOPENする


















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