世の中何が起こるか分からない・・・






アヒルカフェがOPENして2週間






何がいいんだか分かんねぇーけど







カフェの中央に配された噴水に浮かんでいるだけのアヒルが









斬新だとかでビルを特集した雑誌やTVなんかで







カフェが大きく紹介され連日、若い女性でカフェは賑わっている





都会の真ん中の新しいオアシススポットだとかで







休日ともなればカフェの前には長蛇の列も出来ている








たった2週間ほどで当初1ヶ月の売り上げ目標もクリアしてしまい










あまりの評判にこの先アヒル無しの







カフェなんて有り得ない状況に陥ってしまっている






そして俺と類の元には斬新なカフェの仕掛け人として






連日マスコミからの取材依頼が来ている






俺は出来る限りの取材はOKしているが





類なんて門前払いで全て断ってやがる!







お前が強引に推し進めたアヒルカフェなんだからちょっとぐらい協力しろよな!!







そんな中でどうしても断り切れない取材もある






これまで何度もビルの特集記事を






書いてくれているタウン誌から取材の依頼が来た






俺と類のツーショットインタビューを記事の目玉にしたいと言われ






渋る類を何とか説き伏せ







それでも心配なので当日になってのドタキャン逃亡を防ぐ為に







朝から会議を入れそのまま取材場所でもあるカフェへ連行した







案の定類は無表情で記者の質問にも答えているのは俺ばっかり







まぁ・・記者の方も類が無愛想で取材嫌いだって事は







重々承知しているからあまり気にしてないみたいだけど・・












俺にしてもまさかアヒルがここまでウケるなんて思ってもみなかったから





"このカフェのコンセプトは?"





とか・・





"どうしてアヒルだったんですか?"





なんて質問されたって






気の効いた答えなんて持ち合わせていないし






きっと類に聞いたところで凡人には理解出来ないだろーし






突拍子も無い事言われてもフォローに困るだけだから






大人しく隣に座ってくれているだけでOKだ!







アヒルに関しては癒しだとか適当に答えていれば






後は記者がなんとかするだろうから






アヒル以外のカフェの特徴もしっかりとアピールして






取材は一通り終了







後は噴水のアヒル前での写真撮影を残すだけ







類の機嫌は良くも無く悪くも無いといったところ







見分けるのは難しいけど






普通だ







無表情で取材にも無関心だったけど思ったほどご機嫌は損ねていない










並んで座る俺達の前でカメラを構えたカメラマンの






"それでは撮影を始めます〜!"の声と共に撮影が始まった






カシャカシャとシャッター音が連続して鳴り







光るフラッシュに類はちょっとうっとしそうに視線を逸らしていたが






文句を言う事もなく撮影は進み







カメラマンがフィルムを交換している時に記者さんが







"今度はお二人でアヒルを持ってる写真をお願いできますか?"







と言いながら噴水に浮かぶアヒルを一つ持ち上げた








いや・・正確には持ち上げようと手を伸ばした瞬間








類がもの凄いスピードで動いた







こんなに迅速に動く類を久々に見たぞ!







いや・・関心してる場合じゃねぇーんだ!








類はアヒルを持ち上げようとした記者の手からアヒルを取り上げると








"勝手に牧野に触らないでくれない。"








ハァ〜・・








ガキじゃねぇーんだから








頼むから説明とフォローに困る言い方しないでくれ!!









"す、すみません!"








いきなり怒り出した類に慌てた記者が謝っているけど







別に謝る程の事じゃねぇーし






類もそんなに怒る事でもねぇーだろ!?










「あ、あの・・申し訳ありませんでした!」







謝罪を繰り返す記者・・








「類ってあんな奴だから気にしなくて大丈夫だよ。」










泣きそうになっている記者に笑顔を向けると







安心したのか少しホッとした表情を浮かべている















「あの・・このアヒルちゃん達には名前が付いてるんですか?」








「えっ?」







「あっ・・いえ・・今、花沢専務がマキノに触らないでとおっしゃったので・・」







「ああ・・それは気にしないで、類が勝手に言ってるだけだから。」









そうだ!






類が勝手に牧野と呼んでいるだけだ!






なんなんだよ?!







アヒルの牧野って・・?








牧野についての説明なんてややこしくなるだけだから








そこは軽くかわしていると類の携帯が鳴った







学生の頃からいくら携帯が鳴っていても






気が向かないと出なかった類だけど








社会人となった今ではさすがにそんな事はなく







電話にはちゃんと出ている









それもかなり嬉しそうに電話で話しをしてやがる!









"うん、分かった。すぐに行くからそこで待ってて。"









聞こえてきた会話・・







類がこんな風に話す相手って誰だ?










今の今までブスーっとしてたのに







電話の相手には微笑んでやがる!









"じゃあ後でね。"








そう言って電話を終えた類はそのまま俺に







"じゃあ俺行くから。"









とだけ言い残し振り返りもせずにカフェから出て行ってしまった・・・









取材はまだ終わってねぇーんだぞ!








「オイ!類!まだ終わってねぇーだろ!?」








俺の呼び止める言葉は虚しくカフェに響いただけ・・・










「あ、あの・・美作専務、取材でしたらこれで大丈夫ですので、
 お忙しい所お時間を頂いて本当にありがとうございました。」









「ああ・・なんか中途半端になってしまって申し訳ない。」








「いえ、いつも取材に応じてくださらない花沢専務にお越しいただけただけで十分です。
 ありがとうございました。記事が完成しましたらお届けにまいります。
 今日は本当にありがとうございました。」








「こちらこそ、ありがとう。」









ビルの前で記者達に見送られ取材は終了







シートに凭れかかり大きく息を吐き出す








車窓に流れる東京の街並みを眺めながら








しみじみとなんで俺はこんなにも気苦労が絶えない性格なんだろうと思う







俺が禿げたら絶対あいつらのせいだ!!



















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