午後9時




いつもより早めに帰宅できた





ビルのOPEN前後はほとんど休み無しで





帰宅も深夜になる事が多かったので





こんな時間に帰れるのは何ヶ月ぶりだろう・・?





どこかで軽く一杯飲んでとも思ったが




総二郎は掴まらないし類は呼び出したところでこないだろうし




一人で飲むのもなぁ・・・





なんだか味気なくてそのまま屋敷へ帰ってきてしまった・・




屋敷のドアを開ける前に一度立ちどまり深呼吸をして





ドアを開けたら飛びついてくるであろうお袋に備える





一呼吸置いて意を決してドアを開けると





いつも出迎え飛びついてくるお袋の姿は無く




代わりにヤギが出迎えた・・





ウオッ!





な、なんでヤギがうちに居るんだ?





ん?



ヤギ??




このヤギ・・・どっかで見た事あるぞ!?





エントランスでヤギと睨めっこ!





顎を上げて"メェ〜〜〜〜!"と俺に向かって一鳴きしたヤギは





リビングの方へと行ってしまった・・





ヤギのお出迎え・・?





・・って!!





ヤギって言って思い浮かぶ奴はこの世でたった一人




NYに住む猛獣妻だけだ!!!





慌ててリビングへと入って行くと・・





居た・・






猛獣妻とゆかいなペット達と悪魔君が・・






居やがった・・






「あきらく〜ん〜おっかえりぃ〜♪」






ご機嫌な猛獣妻の声に悪魔君とお袋が俺に気付いた・・




「な、何やってんだよ!?お前ら?!」






「何って・・楽しく飲んでるだけだよ〜ん♪」






それは見れば分かるんだよ!






「な、なんで日本に居るんだよ?!
 司はどうした?!一緒か?」






「司はNYだよ〜ん♪」





語尾を全部伸ばすな!!






「あきら君もこっちで一緒に飲まない?」





お袋まで一緒になって何やってんだよ・・






「い、いや・・俺はいい・・・」





「遠慮しないで!みんなで楽しく飲みましょうよ!」





自分ちで遠慮なんてしてねぇーんだよ!




帰宅したらこいつらが待ち受けているなんて夢にも思っていなくて





戸惑っている俺の気持ちになんて気付くはずなく





お袋は俺の腕を引っ張り強引に輪の中へ引き込んで行く・・・





あ〜あ〜こんな事ならどっかで飲んでくるんだった・・





悪魔君はさっきから微笑んでいるだけで一言も話していない・・・





俺はお袋の横に座らされ






目の前には猛獣妻と悪魔君が座っている





真ん中のテーブルにはワインとケーキが並べられている






お袋と猛獣妻はワインのつまみにケーキを食べながら





"このケーキ美味しいぃ〜"






とか・・





"このケーキは生クリームに秘密があるのよ!"





だとか・・






盛り上がってるけどよ・・






俺は全然盛り上がれねぇ!!











お袋と猛獣妻の会話を楽しそうに聞いている悪魔君に声を掛ける







「オイ!なんでこいつが此処にいるんだよ?」






「カフェを見に来たんだって。」





「カフェを見に来た?それだけか?!」






「うん、そうみたいだよ。」









そうみたいって・・






それだけの為に帰って来たのかよ・・?








「司は知ってんだよな?」







「ちゃんと許可は貰ってきたって言ってたよ。」







「マジかよ・・?」







「ねぇ、牧野?司は知ってるんだよね?」








「うん、もちろん!
 ちゃんと言って来てるよ〜ん♪」








「司にはなんて言ってきたんだよ?
 ちゃんと日本に帰るって言ったか?」








「失礼ね!ちゃんと言ったわよ!
 子供扱いしないでよ!」










子供扱いなんてしてねぇーよ!






信用してねぇーだけだ!!















「じゃあ司はなんて答えたんだよ?!」







「ん?司?・・え〜っとね・・すんげぇいいぞ・・って言ってたけど・・
 ねっ!ちゃんと許可貰ってるでしょ?!」










日本語がおかしいだろ?!






類!笑ってんじゃねぇ!!






結局それから1時間もしないうちに





猛獣妻とお袋は酔い潰れてソファーで眠ってしまった








ハァ・・自分の屋敷に帰れよな・・







酔い潰れて眠ってしまった二人をこのまま






此処に置いておくわけにはいかないから







不本意ながら抱き上げそれぞれを部屋へと運ぶ








ここで重要なのが俺が二人とも運ばないといけないって所だ!!







牧野を抱え上げベッドへ運んだのが類だって司にバレたら






後々、とばっちりを受けるのは俺だ!








だからと言って自分のお袋が親友に抱え上げられ







運ばれる姿なんて死んだって見たくねぇ!!











二人をそれぞれ部屋へと運んでリビングへ戻ると






タイミングよく牧野の携帯が鳴り







近くにいた類が出てやがる・・







類が"もしもし"と出た途端、電話口から漏れ聞こえてきたのは








"誰だてめぇ!?"と猛獣の怒鳴り声・・








ハァ〜・・






「俺だよ。親友の声も忘れたの?」







猛獣の怒鳴り声も気にせずのんびりとした類の声






猛獣にしても気付きそうなもんなんだけど







そこは流石、猛獣!








牧野の携帯に男が出たってだけで







頭に一気に血がのぼり







"俺様には俺なんて名前のダチはいねぇーんだよ!"






と怒鳴ってやがる・・






ハァ〜・・類から携帯を取り上げ電話に出る









「もしもし?あきらだ。」






「ハァ?あきらだと?!てめぇーぶっ殺す!!」







電話に出ただけなのに親友からの殺人予告・・








「ぶっ殺すのは類だけにしてくれ!」







「さっきのは類か?クソッ!あいつもぶっ殺してやる!」









だから類だけにしてくれって・・








「オイ!あきら!つくしは何処だ?!
 なんで電話に出ねぇーんだよ!?」








「今、俺んちだ!牧野なら酔い潰れて寝ちまったから運んだところだ!」








「誰がつくしを運んだんだ?!
 類か?!類がつくしに触ったのか?!」









めんどくせぇーな・・









「牧野を運んだのは俺だよ!」








「どうやって運んだんだよ?!
 あいつに触ったのか?!」








触んねぇーでどうやって運ぶんだよ!?






俺はエスパーか?!








「女房の事がそんなに心配なんだったら勝手に出歩かねぇーように監視してろ!!」









「お前に言われなくても分かってんだよ!
 俺様に指図すんじゃねぇ!!」








結局、怒鳴り散らしただけで






一方的に切られてしまった電話・・・








どいつもこいつも勝手な事ばっかり言いやがって!!








我が儘すぎんだよ!!
















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