Myself / Himself-2

タクシーを降りて美作さんのお屋敷の前に立つ 久しぶりに訪れたお屋敷だ 門の横に付いている呼び鈴を押そうとした瞬間、 中から門が開いて美作さんが出てきた 「よお!早かったな。」 「うん、近くにいたから。」 「そっか、まぁ寒いから中入れよ。」 「うん、ありがとう。」 懐かしいバラのアーチを潜り抜けてお屋敷の中へと入ると そこには西門さんと花沢類も居た・・・ 「よお!」 「ど、どうしたの?みんなで?」 「記憶の戻った司が日本に帰ったから暴走する前に止めてくれって  姉ちゃんから連絡があったんだよ。」 「椿お姉さんから?」 「おう!で、お前司に会ったんだろ?」 私は西門さんの質問に頷いただけ・・ みんながここに集まっているって事は 道明寺の記憶が戻って彼が何のために日本に 帰ってきたのかも知っているのだろう・・ 「で、プロポーズでもされたか?」 「えらく直球ね?」 「されたんだろ?」 「されたけど・・あれってプロポーズになるのかなぁ?」 「何て言われたんだよ?」 「別れたつもりは無いって・・だから諦めて俺と結婚しろって言ってたけど・・」 「で?諦めて結婚すんのか?」 「するわけないでしょ!!」 そうだ、するわけない! どうして私が人生諦めなきゃいけないのよ! 私にだって私なりの人生のビジョンってもんがあんのよ! 10年ぶりに会った奴にどんなに甘い言葉でプロポーズされたとして その場でOKしたりなんてしないわよ!! 「俺らに怒ったって仕方ねぇーだろ?」 「・・そうだけど・・」 「ねぇ牧野?司はそれで納得したの?」 「してない・・し、って言うか返事は1ヶ月待ってやるからって言ってたけど。」 「じゃあ、今、考え中なんだ?」 「か、考え中って・・いくら考えたって答えは変わらない・・」 「本当に?」 眠そうにクッションを抱え込みながら話す花沢類は 何が言いたいのだろう? 「花沢類は変わるって言いたいの?」 「ん?分からないけど不変の物なんてこの世には存在しないと思ってるから。」 「不変の物?」 「そっ、それがどう変化するかは分からないけど、  どんな物だって変わらない物なんて無いと思うし、  人の気持ちだって同じだと思ってるからね。」 「私の気持ちも変わるって言ってるの?」 「うん、どう変化するかは分からないけどね。」 花沢類の言葉に考え込んでしまった私に美作さんが 「まぁ取りあえず後1ヶ月時間はあるんだから  ゆっくり考えていけよ。」 「それよりお前、司が今何処にいるかとか知らねぇーよな?」 あっ!嫌なこと思い出した・・ 「・・って・・その顔は知ってんのか?」 「知ってるも何もあいつ私の部屋の鍵を勝手に付け変えて  お風呂に入ってたわよ!!」 「なんだよ!もう充分、暴走してんじゃねぇーかよ!あのバカ!!」 「してるよわ!昼間いきなり会社に現れたと思ったら別れたつもりは無いから  結婚しろって言うし帰ったら鍵は付け替えられてて人の部屋で何やってんのよって  聞いたら風呂に入ってただけだって・・あっ!ねぇ、ちょっとコレ見て!」 もっと大事な事を思い出した・・ 慌てて脇に置いていたバッグからさっき道明寺に渡された書類を取り出した 「ねぇ、コレって本物?」 私の手から書類を受け取ったF3が代わる代わる読んでいる・・ 「多分、本物だろーな・・」 「そーだろーな、司がこんなもん偽造する必要ねぇもんな。」 「まっ、でもよかったじゃねぇーかよ。  お前、借金無くなったんだからよ。」 「全然よくないわよ!ねぇ、これ何とかして取り消せない?」 「お前・・取り消すって・・マジで言ってんのか?」 「当たり前でしょ!あいつにローン払ってもらう筋合いないもん!」 「筋合いなくったってお前がこれから29年かかってコツコツ払っていくしかなかった  金をバカな大金持ちが払ってくれたんだからありがたく貰っとけよ!」 29年もコツコツも合ってるから反論のしようがないけど・・ なんかムカつく! 「やだ!あいつがお金払った部屋になんて住みたくない!!」 「住みたくないって言ってももう金は払ってあんだし、  今さらどうしようもねぇぞ!?」 「だから何とかこれを取り消す方法考えてって言ってんでしょ!」 「俺はヤダ!」 「俺もパス!」 「俺も。」 「ちょっと!なんなのよ!協力してよ!!」 「お前なぁ、冷静になって考えてみろよ。  俺達だって司とはここ数年会ってねぇーけど、  10年ぶりに思い出した恋人に別れてねぇーって言い張って  結婚迫って、その女の部屋の鍵を勝手付け替えて風呂に入ってるような男だぞ!  あきらかにバカがパワーアップしてんじゃねぇーかよ!  出来れば俺らだって係わり合いになりたくねぇーんだよ!」 「そーだぞ!牧野!  いいかお前はダチだから困った時は応援はするけど積極的に俺らを巻き込むなよ!  自分の問題なんだから自分で解決しろよ!」 「なによソレ?」 黙って聞いてれば好き勝手な事ばっか言わないでよね! 結局は自分で解決しろよ!なんて頼りになりそうでいざとなったら全く頼りにならない あ〜あ〜少しでも協力してくれると思った私がバカだったわよ!! 「分かったわよ!自分の問題なんだから自分で解決するわよ!」 「そうだぞ!牧野!」 「それがいい!」 「そうしろ!」 ハァ〜・・疲れたぁ・・ 「じゃあ話しは終わりでしょ!?私、帰るわね!」 「お前、何処に帰るんだよ?部屋には司が居るんだろ?」 「会社の近くのホテルにでも泊まるわよ!」 「だったら家に泊まっていけよ。」 「・・えっ!?いいの?」 「ああ、お前だったらいつでも大歓迎だし、  何よりこの状況でお前を帰したなんてお袋にバレたら  俺が何言われるか分かんねぇーかんな。2、3日泊まって行けよ。」 「そんな2、3日って今夜だけでいいよ。」 「じゃあ明日はどうすんだよ?」 「それは明日になってから考えるわよ・・」 実際、明日の事なんて考えられなかった・・ とにかく今日を無事に終わらせる事・・ それがとりあえずの目標なんだから 「牧野?2、3日あきらん家に泊めてもらえば?」 「花沢類まで・・」 「だって司の事だからあの狭い部屋にそう長くは過ごせないと思うから、  2、3日して帰ったらきっと司は居ないと思うんだけど。」 確かに花沢類の言う事には一理ある! 高等部の頃、泥棒に入られた私を心配してボロアパートに 住んでくれた事もあったけど・・ 結局は長続きせずたった一晩で天井が低いだの汚いなど 散々文句を言ってたものね あの根っからのお坊ちゃまがボロアパートじゃないにしても 2LDKの狭い部屋でメイドさんもいない所で長い時間を過ごせるとは思えない とにかく2、3日の我慢だ! 結局、私はこの日から一週間、美作さんのお屋敷にお世話になることになる・・
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