Myself / Himself-3

3日だけのつもりだったのに・・ 美作さんのお母さんと双子ちゃん達に涙ながらに引き止められ 結局一週間もお世話になってしまった まだまだ引き止める気満々の美作さんのお母さんと双子ちゃん達を また遊びに来ますからと何とか説得して自分の部屋へと帰って来た だけど・・ 花沢類のうそつき・・ なにが"司は3日ももたないよ"よ! 大うそつき!! 居るじゃないのよ! マンションの下から見上げた窓には灯りは点いていなかった やっぱり居ないんだって安心してドアを開けてそう長くもない廊下を通り リビングへと足を踏み入れて固まってしまった・・ アレ?私、部屋間違えた? 思わずもう一度外へ出て部屋番号を確認するけど・・ 合ってる・・ けど・・部屋の中は1週間前とは大違い 何が違うかって? 違ってる所が多すぎて違っていない所をあげた方が早いかも だってまずテレビが置いてある・・それも薄っぺら〜くてバカでかいのが・・ それにサイドボードも違うしその上にオーディーオセットが置かれてて 何よりソファーが違う!! 私のお気に入りのソファーが無い!! 床にひいてあったラグも・・無い!! あのソファーもラグもサイドボードも間接照明も 私が少しずついろんなお店を回って見つけ出した お気に入りの家具が全部無い!! もしかして!! 慌ててベッドルームに使っていた部屋へと駆け込むと・・ やっぱり・・無い・・私のベッド・・ 代わりに広くも無い部屋のど真ん中に鎮座しているのは 場違いなダブルベッド・・ その真ん中がこんもりと盛り上がっていて カブト虫男が眠っていた・・ 信じらんない!! なにやってんの?この男!! ムカつくーー!! 未だ手にしたままだったバッグをバカ男の頭めがけて振り下ろした!! "バコーーン!!"といい音がしてバカ男がうめき声を上げた すかさずシーツを剥ぎ取りベッドから彼を引きずり出し リビングへと引っ張って行った 「ちょっと!コレどういう事なのよ!?  ちゃんと説明しなさいよね!!」 「はぁ〜!?なにがだよ!?  おめぇーこそいきなりなにすんだよ!!」 「ムカついたから殴っただけよ!  あんた私のソファー何処にやったのよ!?」 「ソファー?ああ・・貧乏くせぇーから捨てた。」 捨てた・・? 彼の口から軽〜く吐き出された言葉に唖然としてしまう・・ 「お前の部屋にあったもん安物っぽくてセンス悪いから  俺様が全部買い換えておいてやったんだぞ!ありがたく思えよ!」 「誰が思うか!バカ!!  人の部屋の物を勝手に捨てたりしないでよ!」 「人の部屋ってココは俺様の部屋でもあんだよ!」 「私は認めてないわよ!」 「お前が認めなくても法律上ももう半分は俺様のもんなんだよ!  俺様がこんな狭い部屋で我慢してやってんだソファーの一つや二つで  夜中にがたがた騒ぐな!!」 あ〜また聞き捨てなら無い事言った・・ 「法律上も半分あんたの部屋ってどういう事よ?!」 「ほれ!コレ読んでみろ!」 金切り声を上げる私に少し顔を顰めながら彼はテーブルに置きっぱなしになっていた A4サイズの封筒を投げてよこした 中に入っていたのは登記簿で・・ 名義変更がされてて・・ 所有者の名前の欄にしっかりと道明寺司って名前が私の名前の横に連なっていた・・ 「あんた、あたしになんか恨みでもあるわけ?」 「恨み?そんなもんねぇーよ!」 「だったらどうしてこんな事ばっかりすんのよ?!」 「全部、お前のためにやってやってんじゃねぇーかよ!  感謝しろよな!!それにお前、一週間も外泊しやがって!  生活が弛んでるぞ!」 もう開いた口が塞がらない・・ ローンを勝手に払われて家具を勝手に捨てられて 登記簿を勝手に変更されてお前のためにやってやったって 恩着せがましく言われて感謝しろって言われて おまけに生活態度まで口を出されて・・ 一週間の外泊って・・誰のせいで帰って来られなかったと思ってんのよ!! 生活が弛んでいようと乱れていようと この男には一切関係ないはず でもね・・まだまだ続くのよね・・ このバカ男の暴走が・・ 「それからお前の洋服も新しくしといてやったぞ!  安もんばっか来てねぇーできちんとした格好しろよ!」 「・・もう・・大きなお世話よ!」 「・・それから・・」 「まだあんの?」 「・・それから!お前、なんで男の写真があんなにあるんだよ!  全部始末しとけって言っただろーが!温厚な俺様でもさすがにキレるぞ!!」 もういちいち反論するのはやめよう! そうだ・・勝手な事ばかり言っている目の前の男をシャットアウトしてしまおう・・ 私の前には誰も居ない この部屋には居るのは私だけで 私の耳には何も聞こえない そう決めた! あ〜あ〜疲れた・・ 明日も仕事だからお風呂入って寝よ! そう決めてまだ何か喚いている彼をそのままに着替えを持って バスルームへと入っていく ゆっくりとお風呂に浸かり乾いた喉をビールで潤し リビングのソファーに座りワインを飲みながら 私の動きを目で追っている彼をそのままに 寝室に入り鍵を閉めた 彼の匂いが残るシーツを剥ぎ取り新しいシーツに変えると ベッドに横になり目を閉じた どんな時でもどんな状況でも眠気と食欲だけは どうする事も出来ないこの体質は今でも健在 こうして3週間の奇妙な同居生活が幕を開けた
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